目次

各教科書のリレーショナルデータベース

新課程の教科書の表記の比較

「情報B」の時代より良くなっている。複数の表、関連付けのうち少なくともひとつは入っていて、単なる「表になったものはリレーショナルデータベース」という短絡的な表現はなくなっている。数研のものは表を(リレーション)と読ませて、表がただの表でないことを示して上手にかわしている。表が1つしかなければ絶対にリレーショナルデータベースという事ができないのかという問に対して正しく答えられるのはこれかもしれない。

出版社 記号番号 書名 リレーショナルデータベースの説明
東京書籍 情科301 情報の科学 蓄積管理する情報を複数の表で整理して管理するデータベースを関係データベースという
実教出版 情科302 最新情報の科学 行と列によって構成された表形式のデータの集合(テーブル)を,互いに関連付けているデータ構造。
実教出版 情科303 情報の科学 最も利用されているリレーショナル型データベースを想定している。複数の二次元の表形式で管理し、項目同士を関連付けて...
数研出版 情科304 高等学校情報の科学 各データを表(リレーション)で表したデータベースをリレーショナルデータベースという。
日本文教出版 情科305 情報の科学 いくつかの表に分けて管理するようなデータベースをリレーショナルデータベース(関係データベース)という。

表、行、列などをどのように教えているか

まちまちである。実社会での混乱をそのまま反映している。併記をするとともに将来を見据えて標準を示したいが、難しい。リレーション、タプル、属性が学問の観点からすれば正しいのだろうが、まだ一般的ではないしSQLでは使われていないのでメリットが感じられない。

出版社 記号番号 書名 リレーショナルデータベースの呼び方 表の呼び方 行の呼び方 列の呼び方 扱い 例の内容
東京書籍 情科301 情報の科学 関係データベース テーブルと呼ばれる表 (条件を満たすデータだけ) 項目(属性,フィールド) SQL 図書/分類
実教出版 情科302 最新情報の科学 リレーショナル型データベース 表(テーブル) 行(レコード) 列(フィールド) 表計算でlookup 生徒/図書貸出/書籍
実教出版 情科303 情報の科学 リレーショナル型データベース レコード フィールド(説明では項目も) 表計算でlookup 生徒/図書貸出/書籍
数研出版 情科304 高等学校情報の科学 リレーショナルデータベース リレーション, 表 タプル(レコード) 属性(フィールド) 関係演算の概念のみ 生徒/部活動/電話番号
日本文教出版 情科305 情報の科学 リレーショナルデータベース レコード(行,データ単位) フィールド(列,項目) 簡単なデータベースの作成 修学旅行お勧めスポット/推薦人/場所

情報B(旧課程)の教科書の表記の比較

新課程のものがかなり良くなっていたので、旧課程のも改めてまとめてみました。

年によって内容は訂正されている可能性もあります。平成18年の検定のものを調べました。

出版社 記号番号 書名 リレーショナルデータベースの説明
実教出版 情科069 最新情報B データを2次元の表形式にしたものがリレーショナル型である。
開隆堂出版 情科070 新版 情報B 情報の科学的な理解 関係型データベース:データを複数の2次元の表形式でまとめたもので,表どうしを関連付けることにより一つのデータベースとして利用することができます。リレーショナル型データベースとも呼ばれています。
啓林館 情科071 高等学校 情報B 最新版 関係データベースでは,複数のテーブルのデータを組み合わせて一覧表や名簿などを作成できる。そのため,テーブルを分割しても,必要な情報をまたつくり出すことができる。
数研出版 情科072 三訂版 情報B 情報の世界の仕組み 住所録のような,表をデータモデルとするデータベースをリレーショナルデータベースという。
日本文教出版 情科073 新・情報B 探求する楽しさ リレーショナル型データベースは,一覧表どうしを関係付けたものといえる。
第一学習社 情科074 高等学校 三訂版 情報B データどうしの関係を,表の形にモデル化したものをリレーショナル(関係)データモデルとよび,この考え方を利用したデータベースを,リレーショナル(関係)データベースという。

もちろん複数の表を関連づけることは他の場所で説明しているのですが、生徒が「リレーショナルデータベース」とは何かを教科書から抜き書きした場合にはこのようになってしまうというわけです。ひょっとしたら教師もやってしまうかもしれません。

啓林館のはちょっと説明が必要です。抜き書きの部分は本文の途中にあり「定義」ではなく「特徴」のように書かれています。そして目立ちません。関係データベースが話の中心にはないのです。まず、ひとつの表で表されるデータベースを使って図書貸し出し表を表計算で扱います。次にデータが多くなると関係データベースを使うとよいと話を運び、この時点では関係データベースの何たるかを説明しない。図書貸し出し表を図書の表、生徒の表、貸し出しの表に分けて記録する方法とそれが有利な理由を説明する。そして上記の関係データベースは分割したテーブルから元の表をつくることができるものであると話を運ぶ。「複数の表を関連づけて」だとどのように関係づけるのかはわからないが、この説明ではもともと一つの表だったのですんなり理解できる。よくできていると思う。新課程では啓林館は情報の教科書を出さない。

聖愛中学高等学校
安達順一
http://www.seiai.ed.jp/
Mar. 2013